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『あの日のレクイエムが聴こえる』 [こぼれ落ちる想い]

 ♪『Spanish Concert』/(C)higu
*この作品はこの音楽とともに。


『あの日のレクイエムが聴こえる』 夏実

あの時*
君は お腹の中にいた

 ボクハ ココニイル

君は
力一杯 私のお腹を蹴って
命の確かさ 教えてくれた

愛する人の傍らで
何の不安も抱かずに
ただ いつもの朝が訪れることを
当たり前のように
眠りに落ちた

突然
ゴーッッッという
地の底からの叫び声が 聴こえたような気がして
全身の神経が
逆立つような感覚に襲われて
飛び起きた

今までに 感じたことの無い恐怖
全身を 震わせる

立つことを拒むような その揺れに
心底の恐怖が まとわりつくように
這い上がってくる

早鐘のように 打ち続ける鼓動
……。
……。
何度も 何度も
余震は続く

怒りが 沈みゆくように
やがては 地の底に消えていった


弾かれるように つけたTV

 街ガ
 燃エテイタ
 崩レテイタ

生まれて初めて見る 光景が
言葉を奪い去る

知っている 街が
愛する人と訪れた 街が
想い出に溢れた その街が
無惨に

呆然と 見つめる目から
ただただ
涙が伝い落ちる

 アア
 ドウシテ
 コノヨウナ コトガ

なす術も無く
ただただ 焼き尽くされてゆく 街

愛する街に 埋もれて
何千人もの命が
その瞬間に
天に 召された
何万人もの 人々が
闇に 放り出された

身も 心も
その人の 人生さえも
激しく揺さぶった、あの日。

……ハッとした。

 ココニイル
 ココニイル

私のお腹を蹴る 命
消えてしまった 命
生まれ来る 命
命は つながってゆくのだと
途切れることなく

君は その年に生まれた



傷ついた 街
大きな爪痕 残しながら
今も 静かに喘いでいる

想い出の場所にも
閉店の張り紙
何だか 瘡蓋(かさぶた)みたいで


ああ あの時
空を仰いで
一体 何が起こったのかと
涙が溢れた

今日の日のような
穏やかな日が
あの日も 訪れるはずだったのに


……息子は今年、八歳になる。


※八年後の、同じ日に。


*あの日……1995年1月17日、阪神淡路大震災。

☆photo/(C)MIZUTAMA
★words/(C)夏実  詩集『Blue Doors〜ココニ、イル』より


※今年で、あの日から12年。
 この作品をしたためた日は、あまりに美しく晴れ渡った
 穏やかな日でございました。
 当時、この作品に添えられた言の葉を、そのままここに。
---------------------------------------------------------------
☆あれは、1995年1月17日の早朝のこと。

決して忘れられない記憶がもたらされたあの日。
しかし、それは人各々に重さがまるで違うものとなってしまった。
正直、書くことにためらいをおぼえた。

しかし……
書いてみようと想った。

『Spanish Concert』という楽曲は、このレクイエムとして創られたわけでは決して無い。
しかしこの曲が、私のこの事柄について書くことへのためらいを
捨てさせたのである。

フト、見上げた青空に
余りに穏やか過ぎる、今日という日。
流れてくる音楽に……
心突き動かされるように、一気に書き上げた。

-----------------------------------------------------------------
☆midi作曲家であるhigu氏へ、心からの感謝を込めて。


 今日はその日とは違って、冷たい雨のそぼ降る日となりました。



     


nice!(3)  コメント(10) 
共通テーマ:日記・雑感

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コメント 10

同じ関西の人間ですので、もちろん神戸(とくに芦屋・西宮・尼崎)には
知人もおりましたので、1月17日のあの悲しい感情が甦ってきます。
防災に対する意識を高めることが、亡くなられた方たちへの
供養になると思いますので、昨晩は地震や災害にあったときの
対処を家族で話しました。
(nice ! は控えさせていただきました)合掌
by (2007-01-18 08:04) 

ryus_cafe

>カフェオランジュさんへ.*:。.☆
コメントありがとうございます.*:。.☆
同じ関西であっても、その場所によって想いの深さが各々違って参りますね……。
(正直、こういう内容のものについて綴りますのは、本当に勇気がいります。)
当時は幸い、肉親には命に関わるところまでの被害は出ませんでしたけれど、受験シーズンも間近のことでもございましたので、本当に大変でございました……。

今朝息子がおはようの後にすぐ「地震が起こらなくて良かったね。」と申しました。
毎年、その日に大地震が起こるわけではないのはわかってはいても(そのようなことになったら、とんでもないことです!!!)、そんなふうに思う程、リアルに感じられているのだな……とあらためて想いました。
(息子自身は実際の記憶には無いことでございますけれど、語り継いでゆく大切さを感じました。)
一昨日には震災のことについて、作文を書く宿題が出ておりました。
親などに、当時のことを聞いて書く、或は先生からのお話についての感想を書く、というものでございました。
カフェオランジュさんのところも、家族でそのようなお話をなさったとのこと。
何よりのことだと想います。
忘れないでいること……大切でございますね。

心からの感謝を込めて。
by ryus_cafe (2007-01-18 10:19) 

つーちゃん

先日ニュースで「震災の年に生まれた子供達」の特集が組まれてました。
ふと「夏実さんの息子さんもその年に生まれたのでは?」と思いつつ、話題が話題なので言い出せずにおりました。

あの地震は街にも人の心にも本当に大きな傷跡を残したと思います。
ウチは幸いにも地震はあっても被害の殆ど無い地域でしたが、TVで速報がはいる度に被害状況が悪化していくのをなすすべも無く見ていたのを覚えてます。
大自然の圧倒的な力の前に人間の無力さを感じました。
そして復興に向けて頑張っている被災地の方の一生懸命さや笑顔に「人間の強さ」を学んだ気がします。

震災やその後、震災の影響でなくなった方々のご冥福をお祈りします
by つーちゃん (2007-01-18 10:20) 

ryus_cafe

>つーちゃんさんへ.*:。.☆
心温まるコメント、いつも本当にありがとうございますφ(^-^*)
……そうなのです。おっしゃる通り、息子はその年に生まれました。
彼は私のお腹の中で、震災を体験致しました。
幸いにも、電気、水道、ガスなど、生活には困らない環境でございましたので(一時、停止はしましたけれど……すぐに復旧致しました。)本当にTVを観ているのが何とも辛かったですね。
数日後、芦屋から伯母が参りました。
完全に電気、ガスなどが止まってしまっていて……と言って。
美しい伯母の疲れ切った表情が、お風呂でどんなに嬉しそうに輝いたことでしょう。
普通の何気ない生活がどんなに幸せなことであるかということを、しみじみと考えさせられました時でもございました。

震災で亡くなられた方々、大切な人を失われた方々の悲しみは本当のところ、癒えることなど無いのかもしれません。
by ryus_cafe (2007-01-18 11:06) 

人は、嫌なことを忘れることが出来るイキモノですが、嫌なことの中にも
忘れたくないことがありますね。ぼくは、震災から何を学ぶか?

12年後のこの日も、がんばって生きている多くの知らない誰かにナイスです。みんな負けるな!
by (2007-01-19 00:59) 

ryus_cafe

>aerialさんへ.*:。.☆
力強いコメント&nice!ありがとうございます♪
私自身、忘れてしまっていてはいけないことがたくさんあるのだということを、この震災であらためて学んだように思います。
普段当たり前のように感じていること、出来ていること。
それら全てが本当に便利で幸せなことなのだということ。

あの中から、再び歩き始めた人たち。
やはり、文句無く素晴らしいですわよね!
by ryus_cafe (2007-01-19 15:09) 

chi-ran

とても 伝わる想いです!
 わたしも最近おなじように感じて書いたことばがありました^^シンクロです~ 
終わるいのちと生まれてくるいのち すべてやわらかく繋がる輪だと
わたしも体感します♪ お子様の誕生の様子がなんて命溢れることばで
伝わるのでしょう~。

気持ちがとっても暖かくなりました^^ ありがとうございます♪
by chi-ran (2007-01-20 16:02) 

のらりくらり

“命は つながってゆくのだと
途切れることなく”…
改めて、今生きているとことの大切さを感じさせられました。
震災から何を学んだのか…を改めて問われたような気がします。
忙しさの中に埋没している自分に、もう一度
考える機会を与えてくださったような気がします。
今、できること…精一杯生きること。
…精一杯生きている人たちを応援すること。
“命は つながってゆくのだと
途切れることなく”…
今まで生きてこられッ方々への感謝を忘れることなく…。
by のらりくらり (2007-01-20 16:16) 

ryus_cafe

>ちえさんへ.*:。.☆
nice!&あたたかでお優しいコメントありがとうございますφ(^-^*)
このところ体調があまり良くなくて、ペースが鈍りがち……(>_<)
ゆっくりと記事を一つ一つ拝見させていただいております。
ちえさんも色々とおありになられたご様子、そっと心配致しておりました。
こうしてまた言の葉を交わせるようになって、とても嬉しく思います.*:。.☆
言の葉を大切に思えば思う程、相手への心遣いもふくらんでしまって、中々上手く言の葉が綴れなかったり、
思いの外ものすごいエネルギーを必要としたりして、中々気軽にコメントを書けなかったり……φ(^-^;;;
そんな自分自身に少し歯痒く思ったりしている今日この頃でございます。
可愛らしいひよこマッチは何だかそんな私の気持ち……
シュッ!と火をつけてパッと美しい炎を見せてくれたようで、何だかスッと肩の力が抜けるような気が致しました(^-^*)
それこそ、気持ちがほぐれるような気が致しました。
相変わらずののろのろペースですけれど、ゆっくりと拝見させていただいて参りますね(////)
(すっかり他の方々とは乗り遅れて(////)記事にnice!マーク、コメントをつけているのは私でございます……(////)コソコソ……)
どうぞこれからもよろしくおつきあいくださいませ.*:。.☆
by ryus_cafe (2007-01-21 14:32) 

ryus_cafe

>のらりくらりさんへ.*:。.☆
いつもながらnoce!&お優しいコメント、本当にありがとうございます(^-^*).*:。.☆
実際のところ、私自身震災のことについて綴ることが出来る程の立場ではないのでございます……。
けれど、8年目のあの日。
あまりにも美しく、穏やかに幸せに晴れ渡った空を眺めておりましたら……
私自身が感じたままを綴ってみても良いのではないだろうか……
と思えてきたのでございます。
同じ関西の地に住む者でも、こんなにも立場や震災を受け止める深さが違うということ。
それでも、震災を綴ってゆくことを恐れてはいけないのではないかと。
息子の小学校でも毎年この時期、震災についての授業が行われます。
それは決して忘れてはいけないことがあるから……。

私の立場で正直に思った通りに綴ってみること……
それは私の唯一出来ることでもあるのだと思って、勇気を持って書きつづることに致しました。
それをあたたかく受け入れて下さったのらりくらりさんのコメントに、本当に心の置き所を得た想いでございました。
心からの感謝をこめて。
by ryus_cafe (2007-01-21 15:43) 

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